The Secret Garden「秘密の花園」Oxford Bookworms

“The Secret Garden”のリトールド版。Oxford Bookworms ステージ3です。もともとは大人用雑誌に発表された作品です。

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“The Secret Garden”書籍情報

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“The Secret Garden”感想

Oxford Bookworms は少ない語彙なのに、物語の楽しさを味わうことができる貴重なシリーズですが、この “The Secret Garden” もよくできています。

表紙のイングリッシュガーデンも内容にふさわしいですし、イラストもエキゾチックな雰囲気で楽しめます。

Oxford Bookworms が優れていると思うのは、ストーリーを生かしたリトールドが多いからです。たとえば、秘密の花園 The Secret Garden (ラダーシリーズ Level 2) は、「ラダーシリーズ」のリトールド版で、語彙1,300、語数20,910語なので、Oxford Bookworms の語彙 1,000、語数10,715よりも長く複雑なはずですが、読後感は大きく違います。

違いが大きな冒頭部を引用します。

ラダーシリーズ

When Mary Lennox was sent to Misselthwaite Manor to live with her uncle, everybody said she was the most disagreeable-looking child ever seen. She had been born of English parents in India, where she had lived until her parents died suddenly of sickness.
メアリー・レノックスがミッセルスウェイト屋敷に住む叔父のもとに連れてこられたとき、誰もがこんな不機嫌な顔つきの子供は見たことがないと言った。メアリーはインド生まれで、イギリス人の両親が急病で亡くなるまで、インドに住んでいた。

Oxford Bookworms

Nobody seemed to care about Mary. She was born in India, where her father was a British official. He was busy with his work, and her mother, who was very beautiful, spent all her time going to parties. So an Indian woman, Kamala, was paid to take care of the little girl.
メアリーがどうなっても気にする人はいないようだ。父親はイギリス人だが、インド勤務の役人で、メアリーはインドで生まれた。父親は仕事に忙しく、母親は美しい女性だったが、パーティに明け暮れる毎日で、メアリーの世話をするために、カマラというインド人女性が雇われた。

「ラダーシリーズ」の冒頭の一文は、ほぼ原文そのままなので、その点では優れているように思えるのですが、次の文で両親が死んだという重要な情報が、なんの工夫もなく明かされています。それはいいとしても、原文では直後に長く説明がある「メアリーのネグレクト」という事実がほとんど描かれていません。それに対して、Oxford Bookworms は、冒頭から2ページ以上にわたってしっかりと描写されています。両親の死も間接的に表現されており、メアリーは、家族と使用人が全員死ぬか逃げ去って、まったくの空き屋になったと思われていたところを次のように発見されます。

‘How sad!’ said one.’That beautiful woman!’
‘There was a child too, wasn’t there?’ said the other. ‘Although none of us ever saw her.’
Mary was standing in the middle of her room when they opened a few minutes later. The two men jumped back in surprise.
「むごい話だ!」ひとりが言った。「あんなきれいな女性がなあ!」
「たしか、こどももひとりいたよな?」もうひとりが言った。「見たという人はいないが」
しばらくして扉を開けたとき、メアリーが部屋のまんなかにじっと立っているのを目にした二人は、驚いて後ずさった。

メアリーが屋敷に一人でいるところを発見されるのは、後にメアリーが、放置された「秘密の花園」を探して見つけ出すことの裏返しなので、ストーリー上非常に重要な場面です。誰かに見つけられなければ、メアリーは死んでいたかもしれません。そういう経験をした主人公だからこそ、放置された庭の話を聞いたとき、強い興味をひかれ、庭をよみがえらせようとすることに説得力があるのです。「見つけてほしい」という魂の呼ぶ声を聞く少女、そして、見つけられることによって目をさますちから、まるで「眠れる森の美女」のようです。こどもたちが Magic! と呼ぶのも当然でしょう。

Colin repeated these words several times. ‘The sun’s shining. That’s the Magic. Being strong. That’s the Magic. Magic! Help me! Magic! Help me!’
コリンはなんども言った。「太陽が輝いているよ。これは魔法だね。ちからを感じるよ。これが魔法だね。魔法なんだ!ちからをおくれ!魔法よ!ちからをおくれ!」

Oxford Bookworms は、ネグレクトされたこどもの再生が物語の柱だということを理解したうえで、リトールドしていることがわかります。これが、一見「学習者むけ」に思える本が感動をよぶ秘密なのだと思います。「ラダーシリーズ」がだめだとは思いません(実際に最後まで読みました)が、どちらをとるかと言われれば、やはり Oxford Bookworms を選びます。それにしても、「ラダーシリーズ」は、Oxford Bookworms の倍の語数がありながら、縄跳びの縄をもらうシーンをカットするとは…

“The Secret Garden”あらすじ

メアリーはイギリス人の両親がインド在住中に生まれ、そこで育つ。両親はこどもに興味がなく、メアリーはインド人の下僕に世話をされる。メアリーがぐずると母親に叱られるため、下僕たちはメアリーに対して腫れものに触れるような態度で接する。しかし、突然の流行病でメアリーをのぞく家族や使用人が死に絶え、メアリーは血のつながらない叔父の家にひきとられることになり、イギリスに着く。

叔父はほとんど屋敷にいないが、使用人のマーサはインドの下僕と違って気さくに話しかけてくる。その態度が不快だったメアリーも、屋敷周辺のムーアが花の香りに包まれる季節までには、彼女に心を許すようになる。ひとり、またひとりと周囲の人間と出会っていくなかで、メアリーは敷地のどこかに鍵を掛けられて10年間も誰も足を踏み入れたことがないという「秘密の庭」の話を聞き、そこに行ってみたいと願うようになる。やがて信じられないような出来事によって、メアリーは「秘密の庭」を発見し、それをよみがえらせようとする。

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