「恐怖の谷」の冒頭についてのコンテンツが長くなりすぎたので、その続きを書きます。前回のコンテンツを読んでいない方は、先にこちらをどうぞ。 ワトソン、怒りをおさめる 「恐怖の谷」の冒頭で、ホームズはワトソンの考えを横取りし…
CATEGORY 深読みシャーロック・ホームズ
ロンドンっ子だって読めてない!まるで暗号「恐怖の谷」
外国語として英語を勉強している人は、一度は「いくら努力したってネイティブにはかなわないんじゃないか」と思うことがあるでしょう。英語が母語の人間にとって英語を失うことは社会的な死に近い。いっぽう日本人は英語ができなくても幸…
「バスカヴィル家の犬」一文目の謎
「ノベル」を書き起こす作家にとって、一文目は極めて技巧を凝らす場所です。読んだことがなくても、一文目だけは知っている小説も少なくないでしょう。「我が輩は猫である」「木曾路はすべて山の中である」「国境の長いトンネルを抜ける…
シャーロック・ホームズ VS ドクター・ロイロット
ベーカー街の探偵事務所を訪れた悪党のなかで、最も強力な敵はもちろんモリアーティ教授ですが、その次くらいに位置するのが “The Adventure of the Speckled Band” 「まだらの紐」のドクター・ロ…
注意:薪は暖炉の前に置かないでください
「バスカヴィル家の犬」でヘンリー・バスカヴィルとワトソンが初めてバスカヴィル館を訪れる場面ですが、ここが非常に印象的な描写です。 バスカヴィル館の描写 ヘンリー・バスカヴィルは、ついに先祖代々の館に初めて足を踏み入れます…
契約条項を翻訳したら、密室殺人に穴があく……
翻訳にも色々種類がありますが、文学作品の場合、正確で誤訳が少ないが冗長で退屈な文と、ちょくちょく誤訳があるが文体にリズムがあって読むのが楽しい文の場合、どちらをとるかと言われると、この選択は非常に困ります。程度問題でしょ…
ワトソンの「三度見」って、なに?
「ボヘミアの醜聞」で、ワトソンがベーカー街でホームズを待っている場面。約束の3時が過ぎてもホームズは現れません。しかし、ワトソンは事件に興味津々で、どれだけ帰りが遅くなろうと待つ決意です。4時近くになって、ドアが開くと「…
単数と複数の使い分け
英語には単数・複数の区別があり、あるだけならいいのですが、それによって意味が大きく変わる場合があります。日本語でも単複の区別はありますが、その運用ルールは英語の方がはるかに面倒だと感じます。動詞の変化とか、三単現の s …
ワトソンのユーモア
ワトソンは伝記作家としての意識からか、みずからジョークやユーモアを言うことは少なく、逆にホームズから冷やかされる立場にあることが多いのです。ところが、堅い文章中にかすかなユーモアを忍ばせる場合があります。不意打ち感があり…
シャーロックホームズの皮肉
短編傑作 “The Red-Headed League”「赤毛組合」の冒頭を紹介します。 ワトソンがホームズの家を訪ねたとき、部屋の中に依頼人がいたので、帰ろうとするとホームズが引っ張り込んで扉を…