19世紀英文学、最高の果実 “Pride and Prejudice”「高慢と偏見」のリトールド版。傑作!
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“Pride and Prejudice”書籍情報
- タイトル Oxford Bookworms Library: Level 6: Pride and Prejudice: 2500 Headwords (Oxford Bookworms ELT)
- 著者 Jane Austen
- シリーズ Oxford Bookworms
- ステージ6
- 語彙数 2,500
- 総語数 29,455
“Pride and Prejudice”感想
19世紀イギリス文学の至宝、オースティンの傑作”Pride and Prejudice” リトールド版です。Oxford bookworms 最高レベルの6なので、敬遠する人もいるかもしれません。多読の語数を稼ぎたい人には向いていないかもしれませんが、じっくり味わって読みたい一冊。
オリジナルはかなり難解な文章の長編で、リトールドで読んでも、けっこう手強いです。独特の入念な心理描写の味わいを再現しようと、リトールドも工夫されていますね。
地の文(三人称)なのか、Elizabethの心の声なのか、それとも実際の会話なのか、このあたりが微妙にゆらぎながら、物語が紡ぎ出されていきますので、客観的な説明文だと思っていたら、いつの間にか主人公の偏見や願望に変わっていたり、クォートなしに実際の会話文が本文にはめ込まれたりします。教科書的に、ここは直接話法、ここは間接話法、そしてここは描出話法、というようにきちんとわけられません。あれ?いつから描写が変わったのかと、パラグラフの先頭から読み直したりすることがあります。こう書くと、やけに面倒くさいなと思うかもしれません。ところが、遠回しなのにリアル、具体的に見えて隠された意味。春のそよ風のようになごやかなやりとりが、瞬時に嵐のような荒々しい感情になって激突する。それなのに、描かれている会話は、表面上、あくまでも礼儀を失わない。(ものすごく腹が立ったとき、逆に言葉がていねいになったりしますよね?)じつに中毒性のある文章です。
テーマの関係で、プロポーズの場面が何度も出てきますが、「絶対にされたくない」と思う相手のプロポーズは、胸焼けしそうなほどくどく、直接話法で何度も会話の往復があるのに、決定的なプロポーズは、原作では何度読み直しても、え? いまプロポーズしましたっけ? これが、そうなの? え? Yesって答えたらしいけど、いつ? みたいに???だらけです。リトールドでは、さすがにもう少し親切ですけど、やっぱりわかりにくい。あのクライマックスがあんなにあっさりなんて!ちゃんと書いてよ!(ネタバレせずに書こうとして、意味が分からない文章になっていますが。)
“Pride and Prejudice”読みどころ
若干のネタバレありなので、注意!
状況
エリザベスは、ダーシーを高慢な人間だと思っていたが、じつは彼を誤解していたことに気づく。だが、気づいたのはエリザベスがダーシーの高慢さを、面と向かって非難し、大げんかをした後だった。エリザベスは、自分は人を見る目が確かだと高慢だったために、ダーシーに偏見を抱いたと知り、恥ずかしくなる。もうダーシーに合わせる顔がないと思っているエリザベスに対し、何も知らない伯父夫婦は一緒に旅行中、夫人の実家の近く、ペムベリーにあるダーシーの邸宅を見に行こうと言い出す。
ここから、描出話法が次々に出てきますが、それは、エリザベスの心が揺れ動いているのを表現するのにふさわしいからでしょう。
‘I ー I am rather tired of large country houses, aunt,’ said Elizabeth, forced to pretend. How dreadful it would be to meet Mr Darcy, while viewing his house!
‘おばさま、わ、私は大きなカントリーハウスでは時間をもてあますので’エリザベスは、とりつくろって言った。「彼の家を見てまわっている最中に、ダーシーと会うなんて、最悪だわ!」
2文目を「」の直接話法で訳していますが、How dreadful …! の部分は、こう読まないと意味不明ですよね。
このあと、エリザベスは、ダーシーが自宅にいないということを知り、ペムベリーに同行する。館につくと使用人が、ダーシーは明日帰ってくると告げる。
How glad Elizabeth was that their own journey had not been delay a day!
エリザベス:「ここに来るのが明日じゃなくて、本当によかった!」
これも直接話法に変えましたが、語法はどうでもいいのです。上のような英文を「エリザベスは彼らの旅行が一日遅れになっていなかったことをどれほどよろこんだことか!」のように、受験英語調のモタモタした読み方をしては、一晩置いたソーダのように味気ない。ボトルの栓を抜いたら、閉じ込められていた感情がジュワッとはじけるところを、一気に喉に流し込むように読む。それが一番おいしい読み方だということです。
ストーリー展開もハラハラ・ドキドキで、急転直下の結末まで、退屈な部分がまったくなし!Oxford bookworms 屈指の傑作!読んで損はないはずです。