2017年7月

注意:薪は暖炉の前に置かないでください

「バスカヴィル家の犬」でヘンリー・バスカヴィルとワトソンが初めてバスカヴィル館を訪れる場面ですが、ここが非常に印象的な描写です。 バスカヴィル館の描写 ヘンリー・バスカヴィルは、ついに先祖代々の館に初めて足を踏み入れます…

契約条項を翻訳したら、密室殺人に穴があく……

翻訳にも色々種類がありますが、文学作品の場合、正確で誤訳が少ないが冗長で退屈な文と、ちょくちょく誤訳があるが文体にリズムがあって読むのが楽しい文の場合、どちらをとるかと言われると、この選択は非常に困ります。程度問題でしょ…

ワトソンの「三度見」って、なに?

「ボヘミアの醜聞」で、ワトソンがベーカー街でホームズを待っている場面。約束の3時が過ぎてもホームズは現れません。しかし、ワトソンは事件に興味津々で、どれだけ帰りが遅くなろうと待つ決意です。4時近くになって、ドアが開くと「…

単数と複数の使い分け

英語には単数・複数の区別があり、あるだけならいいのですが、それによって意味が大きく変わる場合があります。日本語でも単複の区別はありますが、その運用ルールは英語の方がはるかに面倒だと感じます。動詞の変化とか、三単現の s …

ワトソンのユーモア

ワトソンは伝記作家としての意識からか、みずからジョークやユーモアを言うことは少なく、逆にホームズから冷やかされる立場にあることが多いのです。ところが、堅い文章中にかすかなユーモアを忍ばせる場合があります。不意打ち感があり…

シャーロックホームズの皮肉

短編傑作 “The Red-Headed League”「赤毛組合」の冒頭を紹介します。 ワトソンがホームズの家を訪ねたとき、部屋の中に依頼人がいたので、帰ろうとするとホームズが引っ張り込んで扉を…

「バスカヴィル家の犬」いったい「彼」とは誰?

ローラ・ライオンズ完落ち ローラ・ライオンズ夫人は、ついに自分が騙されていたことを知り、何もかもホームズにぶちまけようと決意します。 彼女は「彼」が、サー・チャールズに面会したいという手紙を書くようにうながしたこと、サー…

「バスカヴィル家の犬」美しい花にはトゲがある

「バスカヴィル家の犬」には、美しいと言われる女性が二人登場しますが、そのひとり、ローラ・ライオンズの顔を形容している部分がじつに興味深いのです。 ライオンズ夫人の紹介 新潮社文庫から、ワトソンがライオンズ夫人と初めて会っ…

震える指で器用に巻く?

「バスカヴィル家の犬」のモーティマー医師は自分で紙煙草を巻く人物で、ものすごく器用に1本の煙草を巻き上げます。そのようすをさらに詳しく説明したのが次の文です。 細くて長いその指はたえずうち震え、まるで昆虫の触角のように敏…